おうちこもり子のドラマ・映画評

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NHKスペシャル「詐欺の子」 を観ての感想

オレオレ詐欺の「かけ子」や「受け子」として、犯罪意識のないまま特殊詐欺に加担していく若者の実態を描いたNHKスペシャル「詐欺の子」。

 

イッケメン~な中村蒼さんが出ているのと、

ポスタービジュアルがすごく秀逸なのとで、気になっていました。

 

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中村蒼さん演じる大輔ら「かけ子」「受け子」の若者が、マリオネットのように操られているビジュアル

‥‥気になってはいたのですが、うっかり放送日は見逃し、録画も忘れ‥‥

27日深夜に再放送した際、たまたま途中から見ることが出来て、

あまりにも感動したんで、NHKオンデマンドで単品で買って、通しで見た。

 

ネタバレありのあらすじは別の記事で書いていますので、そちらを。

 

www.ouchikomori.site

 

ここでは、視聴しての感想を書いていきます。ネタバレしてますのでご注意を。

 

★★

➀全体の感想

‥‥まず言いたいのは、NHKさんの本気が伝わる、ものすごく良いドラマだった。

実際に特殊詐欺の「受け子」や「かけ子」をやっていて、少年院に入所している人たちの証言映像なんかも入りつつ、物語は展開していくんだけど、

もしこれが、証言映像ばっかりのドキュメンタリーだったら、意識の低い私は最後まで見なかったと思う。「そっか、詐欺怖いな‥‥」程度に思ってチャンネル変えてただろう。

でも、エンターテインメントとしてのドラマと、実際の証言がすごくうまく織り交ざっていたから、感情移入しながら最後まで見れた。

 

特に、「ドラマとドキュメンタリーの融合感すげー!!」って思ったシーンが一つあって。

実際の元「かけ子」の人が、オレオレ詐欺の拠点となる「箱」を再現する(部屋にカーテン張ったりして、部屋の様子を再現する)ドキュメンタリーシーンがあって、

「こんな感じでやってましたね‥‥」っていう、元「かけ子」の人の声とともに、まず再現された「箱」の全体が映される。

そして、カメラが切り替わらないまま、その「箱」の玄関から中村蒼さん演じる「かけ子」たちが入ってくる、っていうシーンがあって‥‥。

「な、なんか、ドキュメンタリーなのかドラマなのか混乱してきたぞ!!」っていうくらい、あのシーンは秀逸だった。(伝わりづらくてすみません!!)

 

②役者さんの演技

私は感情移入して落ち込んだりしやすいタイプなので、シリアスなドラマはだいたい避けるんだけど、

これを最後まで見られたのは、役者さんたちの演技が素晴らしかったからだと思う。

 

まず、中村蒼さん。

17歳で「かけ子」となり、そこから詐欺組織の中で出世して、グループリーダーである「箱長」にまでなる若者・大輔の役。

17歳の回想シーンと、23歳の現在のシーンと交錯する感じだったけど、大輔の変化をすごくうまく描かれていると思った。

17歳の回想時は髪の毛金髪にして、日雇いのバイトで稼ぐ不良のにーちゃん感を醸しだしつつ、まだあどけない感じもすごく出ていて。

「箱長」として詐欺を仕切っている23歳の時は、完全に「あっち側の人」っていうか、「詐欺を働くことに慣れ、感覚も鈍麻した大人」って感じに溢れてた。やけに堂々としてて、インテリヤクザみたいな。笑

でも、最後、詐欺に加担してることが母親にばれて、被害者のもとにお金を返しに行く時は、

組織の後ろ盾も、「箱長」という肩書も失い、身一つで被害者の前に立たなきゃいけない心細さからか、年相応の、まだ成熟しきってない感じに戻っていて。

そのあたりの変化の描き方が、中村さんすごいな‥‥って思わされた。

 

次に、送迎・見張りの「遠山」役をやられた、長村航希さん。

失礼ながら今回初めて存在を知ったんだけれども、まぁその演技に泣かされた。

もともと中村さん演じる大輔の親友で、一緒に「かけ子」やってたけど下手で、送迎役に回された、って役どころだけれど、

何だろう‥‥いかにもな「下っ端の人」感が出ていた。笑

大輔が詐欺組織の中で出世していく中、自分は運転手役でくすぶっていることへの苛立ちとか、それでも大輔を信頼する気持ちとかも、長村さんの演技からすごく感じ取ることが出来た。

でも、高校の時は黒髪で、まじめそうな感じなんだよね。17歳の回想シーンでは、遠山は黒髪で真面目そうな外見で、大輔は金髪の不良風情。でも23歳の時には、遠山が金髪のチンピラ風で、大輔は黒髪のサラリーマン風になってて、完全に逆転している。そのあたりも演出の妙かな~と思って見ていました。

 

逮捕された後の裁判シーンでも、最初ヘラヘラ黙秘してて、でも大輔が組織の脅迫役と一緒に傍聴に来てるのを見て態度が一変して、堰を切ったみたいに全部語りだす感じもうまかった。

 

あと、一番印象に残ったのは、自分が送迎してた中学2年生の受け子・和人が、自分から逃げるためにわざと警察に捕まったことを知った時の表情。

裁判の被告人席で、パーテーションの向こうにいる和人に近づいて、「和人、ごめんね」って泣きながらつぶやいた遠山の表情‥‥しばらく忘れられないと思う。

 

受け子・かけ子役としては、あと「和人」役の渡邉蒼さん、「玲奈」役の高橋ひかるさんがいるんだけど、この2人の「普通の子」感も良かったな~。特に和人役の渡邉さんは、まぁ~おぼこくって、純情そうで‥‥良い意味で、ホントそこらへんにこういう中学生いるよね‥‥って思いながら見てた。

そんな中学生が、遠山たち詐欺グループのお兄さんたちに構われて、嬉しくなっていっちゃう心情とかも、すごい伝わってきた。

 

ホント出てる役者さん皆うまいから書いてたらキリがないけど、重要な役どころを担う桃井かおりさんの演技も圧巻。詐欺被害で静かに心が蝕まれていってる様子に心痛くなった‥‥。

あと、個人的には遠山の弁護士役・イッセー尾形さんも良かった!!イッセーさんのちょっと飄々とした感じが、唯一の清涼剤だった気がする‥‥。

 

③ドラマを通して感じたこと

なんか最初ね、ドラマの前半見ながら、

「これ、逆に若者たちに、『詐欺のグループ、なんかかっけ~』って思わせちゃわないかな??」って心配になってたんだ。

遠山と大輔がバイクで笑いながら逃げるシーンとか、

遠山・和人・玲奈の3人が、一仕事終えて楽しそうに打ち上げしてるシーンとか、

逆に変な青春感出ちゃわない‥‥?大丈夫‥‥?って思って見てた。

 

でも、そこはさすがNHK‥‥後半になるにつれ、いかに詐欺が人の人生を狂わせるのか、しっかり描き切ってくれていました。

特に、桃井かおりさん演じる小山田光代は、大輔がかけた電話で詐欺被害に遭い、娘からも責められ、ご近所からもバカにされ‥‥そうした心労から旦那さんは自殺してしまって。「お金の問題だけじゃないんだ」っていうことを、今回のドラマで改めて学んだ気がする。

 

また、詐欺に加担する「受け子」や「かけ子」の子たちが、全然罪悪感なく手を染めていっちゃう、ってところが、このドラマの一つのポイントだったと思うのですが、

悪事も細分化していけば、一つ一つは「ただの作業」になるわけで、そういう作業に従事する歯車の一個人には、罪悪感が生まれづらいのかな~、とも思いました。(荷物受け取るだけなんだから大丈夫、自分は悪くない、みたいな)

そういう仕組みが、詐欺に利用されてるのかも、とも。

 

‥‥あとさ、これドラマあんまり関係ないだけど、

「かけ子」とか「受け子」とか「箱長」とか、詐欺組織の中の役割の名前が、「ちょっとカッコいい」名前なのも、問題あるのかな~と。

社会のなかに居場所がないと感じて絶望してる時に、「今日から君も『かけ子』だ!」とか言われたら、役割を付与されたみたいで嬉しくなっちゃうんじゃないかな。

なんかもっと、ダサい名前だったらよかったんでしょうか‥‥苦笑

 

‥‥ということで、「詐欺の子」、役者さんの演技に魅せられつつ、色々なことを考えさせられた、本当に良いドラマでした。

社会派のドラマには詳しくないけど、賞とかとったりするのかなぁ?役を演じる役者さんたちの覚悟とかも伝わってきて、渾身の作品感がすごくあったので、DVDとかも出て、長く残るといいなぁ、と願っています。

 

ここまで読んでくださって、ありがとうございました!